haru_z1kのブログ

30年勤めた国家公務員を中途退職し、ボリビアで中山間地農業をやっていましたが、実家の事情で急きょ帰国しなければならない羽目に...。ボリビアには当分戻れそうにないので、これ以上ボケが進まないように、ニュースや生活の中から頭の体操をしていこうと考えています。

9月1日を全員参加の防災の日に。

広島の土砂災害の犠牲者が50名と発表されました。亡くなった方々のご冥福を心からお祈りいたします。また、行方不明のおそれがあるとされる38名の皆様の一刻もはやい発見を願うものです。

土砂災害の死者50人 捜索再開 NHKニュース

 

台風一過ということと、私の住んでいる北九州市では豪雨の影響をあまり受けていないことから,今回の土砂災害については、ここまでひどいものだとは全く予想だにしていませんでした。むしろ、クーラーのない部屋で過ごす私には、この8月に晴れ間があった日が3日だけだったのが好都合なくらいでした。(野菜が高いのは困りますが・・・)

土石流や崖崩れ同時発生53か所 NHKニュース

 

昨日午後のNHKニュースでは、土石流および崖崩れが53箇所も同時に発生したとのことであり、災害発生が未明であったことから、広島市の災害対策本部、警察、消防のパニック状態が目に浮かぶようでした。特に災害2日目になって行方不明者が急増したのには驚かされました。警察・消防をサポートする本部が全く機能していなかった証拠ですから。

今回のケースについては、避難勧告が遅れたことが混乱に拍車をかけたと思います。なぜ、危険雨量を超えているのに直ちに避難勧告しなかったのか全く理解できません。それは、土砂災害が発生した直前に、極めて危険といわれていた大型台風が通過していたからです。当然、広島市でも、この大型台風が通過するにあたって、どのような状況で避難勧告するか関係部局で事前に打ち合わせはしていたはずで、集中豪雨がどんなに広域であったとしても、避難勧告の組織対応は確認できていたはずですから。(大型台風の通過前に対策本部の立ち上げや関係部局の打ち合わせを行っていなかったとしたら、広島市は行政機関としての機能をはたしていないことになります。)

この避難勧告の遅れが,①避難誘導中の消防の方が亡くなるという二次災害をもたらし、②住民の安否確認を困難にしました。避難勧告が早期に出されていれば、被害が発生している最中でも、多くの住民の方の所在確認が確実に行われていたことでしょう。

避難勧告は、最初の災害発生から1時間以上もあとだったので、災害発生当日の航空写真から、建物の周りに土砂が確認できた地点全てを被災地であると推定しなければならなかったと思います。そして、被災地へ通じる道路が不通で被災地住民の安否確認ができなかった時点で不明認定すべきでした。適切な時期に避難勧告すら出さなかった行政機関が、住民の自主避難を少しでも期待していたとしたらそれは間違いです。常に最悪を想定する。そのために税金で食っているのですから。

繰り返しますが、①適切な時期に避難勧告を出さなかった。②写真で土砂災害が確認され道路が不通で安否確認もできない状態なのに不明認定しなかった。のは、極めて杜撰な行政対応だったと思います。市長を含めて幹部職員は今回の対応についてきちんと検証し、二度と同じ過ちを繰り返さないための対策を講じて欲しいものです。往々にして腐った行政組織では「想定外」という言葉を使い、自らの責任回避・保身に苦心し、結果として同じような過ちを繰り返す傾向にあり、広島市についても同じ轍を踏んでいく気がします。

 

テレビ番組のインタビューでは、被災者の方々から警察・消防等現場(敢えて警察・消防等の実働部隊は「現場」と呼びます。市長や関係部局の幹部で構成する災害対策本部等は「本部」とします。私の経験から「現場」の意見を聞かず、最悪をもたらすのは常に「本部」ですから。)の救援に対する対応の遅さが指摘されていますが、土砂災害の被害を受けた建物が現在確認されているだけで97棟に上るということでは、いくら政令指定都市とはいえ、一地方都市のレベルでは対応できるものではなかったと思います。集中豪雨の範囲がこんなに広範囲でなく、土砂災害の発生が数カ所程度であったなら、ここまで救援の対応が遅くなることはなかったと思います。優秀な職員(幹部)がいれば、被害状況の把握について、もっと迅速に対応できていたかもしれませんが・・・。

大規模災害が発生した場合、行政の対応は、①災害の規模(状況)を把握し、②規模に応じて災害救助資源の配分を決定し、③必要に応じて支援要請を行います。

初動は110番、119番通報に基づいて行われますので、この時点で対応の遅れはありません。通報が増え非番の者を動員しても対応できない場合、被害状況に応じて他の地方自治体や国に支援要請を行うのですが、具体的な被害状況が把握できていない状態では、支援要請を行うのは難しいですし、支援要請を受けた側も,どの程度の人員や機材を送れば良いのか全く判りません。つまり、発生している被害が大きければ大きいほど「現場」対応は困難ですし、被害状況の迅速な把握は、常日頃から被害が発生した際の対応を「本部」でシミュレートしておくことが必要です。実際、国や他の地方自治体に救援要請を行うのは「本部」だからです。

広島市が災害支援で東日本大震災被災地に職員を派遣し、当時の行政の実態を把握・分析し、派遣職員から意見を聞き、広島市の災害対策に反映させることができていたら、若しくは韓国のフェリー事故の対応のまずさを少しでも教訓として考えることのできる幹部職員が居たら、少し違った結果になっていたかもしれません。

 

だいぶ昔の話になるのですが、20年前、国連気候変動枠組条約(the United Nations Framework Convention on Climate Change)の原案作成に携わっていたある科学者の方が、「今、二酸化炭素の排出を規制できたとしても、10年後の気候変動の悪化は止められないのに・・・。」と言っていたのを思い出します。

中国やアメリカが二酸化炭素の排出抑制に後ろ向きなのは20年前から変わっていませんし、国益しか考えない中国やアメリカが当分二酸化炭素排出の削減に取り組むとは思えませんので、今後はもっと頻繁に異常気象が発生することを覚悟しておいた方が良いかもしれません。

 

 それでは具体的にどうすれば良いのでしょうか。

テレビの報道番組の中では「自分の身は自分で守る」みたいな発言が多く見受けられますが、正直なところ無責任だなとしか感じません。数百年、いや、数十年に一度発生する大規模災害について、常日頃から危機意識を持つことは不可能だと思います。一度でも被害を受けたことがある人は、自分の子供や孫の世代まで危機意識を伝えることが可能だと思いますが、多くの方々は「自分とは関係のない世界」だと感じているのではないでしょうか。

実は、偉そうなことを書いている私はAEDの使い方を知りません。AEDとはAutomated External Defibrlllator(自動体外式除細動器)のことで、心臓マヒ等で倒れた人に、機械が電気ショックが必要か自動で判断してくれる器機で、素人でも使えるように設計されていて、駅や百貨店等多くの公共施設に設置されていますし、どこにいっても良く目にします。しかし、脳卒中で倒れた人に使用して良いのでしょうか。子供にも使えるタイプもあるようですが子供に使う場合の注意点はあるのでしょうか。高齢者は一般的に呼吸が浅いので、誤って呼吸が無いと判断しAEDを使用した場合はどうなるのでしょうか。

結論からいえば、AEDの使い方に自信の無い私は、回りに誰か居る状況では、率先してAEDを使うことを躊躇うでしょう。いいえ、私と倒れた人の2人しか居ないという状況以外ではAEDを使わないと思います。

http://www.fdma.go.jp/html/life/pdf/oukyu2.pdf

災害発生時に近くにお医者さんが居てくれたらどんなに心強いことでしょう。お医者さんでなくても、土砂災害の現場で重機の扱える人が居たら、木造家屋密集地の火災で避難場所を的確に指示してくれる人が居たら・・・。そして、そういう状況に陥ったときに自ら対応できるとしたらどんなに素晴らしいことでしょうか。 

 

まもなく防災の日(9月1日)です。私のいた職場は、毎年、電話番の数名を残してほぼ全員参加の避難訓練を行っていました。実はAEDの使用方法も研修していたのですが、私は研修を受ける前に退職してしまったので使い方は実践していないのです。AEDに限らず、何かあったときの対応をシミュレートしておくことは、かなりの効果があるのは間違いありません。

しかし、多くの商業施設や民間企業では、防災訓練を全員参加で行っているところは、ほとんど無いと思います。

大型台風に限らず、南海トラフ地震、富士山や他の活火山の大噴火等、想定されている災害は多くあります。また、このような世界情勢の中、私は日本をターゲットにしたテロもあり得ると考えています。

9月1日に、半日、否、数時間でも構いませんから、インフラをストップし、バスや電車の運行も止める大規模な防災訓練を実施してはどうでしょうか。日本を大きく数ブロックに分割し、ブロックごとに電気、ガス、水道を止め、道路を封鎖し、飛行場の発着を停止する。地方自治体、政府はもちろんですが、民間企業での避難誘導の確認、そして家庭レベルでの対応の確認です。

防災訓練で人命が失われたのでは本末転倒ですから、ひとり暮らしの老人や補助生命装置を使用している家庭の把握等訓練実施前の準備が重要ですし、外国人旅行者等普段防災訓練を経験したことがない人達への対応も考慮しなければなりません。

経済への影響はもちろんありますが、この防災訓練を通じて得られる経験は、経済損失を遙かに上回るものと考えます。訓練の成果(うまくいったところよりうまくいかなかったことへの対策が重要です。)を世界中に発信することもできますし、何よりも人命はお金に換えられない事を世界中にアピールすることにも繋がります。

そろそろ国をあげて災害対策に取り組んでも良いのではないでしょうか。