青春の一冊『二十歳の原点』
特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
皆さんは「青春」という言葉に、どのようなイメージを抱くのでしょうか。
私は葛藤の日々と親友達との出会い、そして、飽くなき知識への欲求、時間との闘いを思い起こします。
ちょうど今日、4月14日は私の父親の命日です。癌の告知と闘病生活を始めてから1年以上経ったこの日、私が中学2年の春に他界しました。
私は「胸にぽっかりと大きな穴が空く」という感覚を知り、その後、あまり笑わない子供へと変化してしまいます。
幸い、近所に住んでいた中学時代の同級生に天才が1人と秀才が1人いたおかげで、彼らから物事の考え方を学ぶことができ、もともと理系が好きだったこともあり、宇部工業高等専門学校へと進学しました。
全寮制(地元で極少数の学生だけが自宅通学でした)で軍隊並みに厳しい訓練。見ること聞くこと全てが新しく、また、世界が如何に欺瞞に満ちていたかを知ったのもこの時です。
学生運動やベトナム戦争の実態は中学出たての小僧には重い現実でした。
そのうえ、本来なら大学4年間で学ぶ高度な専門知識を詰め込まれます。専門書である教科書の負担は大きく、家庭教師や葬儀屋のバイトもやりました。
結局、卒業までの5年間、いつも「時間が足りない」とぼやいていましたが、幸いなことに寮生活で本音でつきあえる親友もできました。
そんな環境の中で出会ったのが高野悦子さんの「二十歳の原点」です。
これは二十歳で鉄道自殺した高野悦子さんの日記を出版したものです。
もう、どのようにしてこの本を手に入れたかは覚えていませんが、私と数歳しか違わない「彼女」=「他人」が悩み苦しみながら生きていたことを知り、私とほぼ同じ年代で物事をこんなに深く考えている「人」がいて、そして死んでいったんだと衝撃を受けました。
本の冒頭に彼女の言葉があります。
『独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である。』
齢56にしても、この言葉は私の心に重く響きます。